球磨郡公立多良木病院は、上中球磨4町村(多良木町、あさぎり町、湯前町、水上村)によって開設された球磨二次医療圏で唯一の自治体病院です。
先達の方々のご努力とご尽力により、病院のほかに、総合健診センター・在宅医療センター・訪問看護ステーション・病児/病後児保育施設・介護老人保健施設・上球磨地域包括支援センター・居宅介護支援事業所が併設された企業団となりました。我々は、地域において「予防医療」、「24時間体制の救急医療」、「急性期から在宅までのシームレスな包括的医療と介護」を実践し、保健、医療、介護そして福祉が、住み馴れた地域で完結できるように尽力いたします。
当院は当圏域で唯一の二次救急病院です。人口減少と高齢化が顕著に進んでいますが、救急車搬入数は年々増加傾向にあり、令和6年には1,518件とこれまでで最も多い搬入件数でした。当圏域における救急車搬送の86.8%を受け入れて、地域の付託に応えることができました。質の高い救急医療は、当院が果たすべき最も重要な責務のひとつであり、引き続き真摯に取り組んでまいります。
地域包括ケアシステムは、『地域一体型のチーム医療』だとも言えます。病院内や企業団内でのチーム医療のみでなく、球磨郡医師会の先生方や行政、介護事業所、そして地域住民の皆様等と共にOne Teamとなり、地域において良質なチーム医療を展開することが地域包括ケアシステムの本質になります。地域でのチーム医療の質を向上させるには、まずは職員一人ひとりがプロフェッショナルとしての矜持を保ち自分を常に向上させながら職責を果たし、つまり一隅を照らしつつも、チーム医療全体・地域全体を俯瞰し、他職種の方々に敬意を払いながら、思いやりと感謝の気持ちを言葉で表すことが肝要だと考えています。
令和7年度の当院企業団のスローガンは、「不易流行と利他の精神」です。不易流行は、江戸時代の俳聖松尾芭蕉が奥の細道の旅路でひらめいた理念です。芭蕉の書物『去来抄』で、不易流行について「不易を知らざれば基立ち難く、流行を知らざれば風新たならず」と述べています。不易流行の『不易』とは、時を超えて不変の真理を意味し、『流行』とは時代や環境の変化に応じて革新されていくことです。当院企業団でも、本質的な理念は大切にしながらも、時代の変化に応じた改革を推進いたします。また、チーム医療の質向上にはコミュニケーションとともに仲間を思いやる心や感謝の気持ち、つまり利他の精神が大切です。「今日、ありがとうを何回言った?」を標語に掲げ、ウェルビーイングを実感できる病院企業団づくりに努めます。
当院企業団の基本理念は、『ひとと社会を診る医療・福祉を実践して、地域社会に貢献します』です。高齢化が進み、また価値観が多様化する中で、患者さんとご家族の意志やお考えを礎として、「治す医療」と「支える医療・介護・福祉」を継続してまいります。そして、“地域と共に”球磨医療圏の健康長寿を支えてまいります。
今後ともご指導ならびにご支援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7年4月
球磨郡公立多良木病院企業団 企業長兼院長兼総合健診センター長
髙森啓史